入れ歯生活

入れ歯の吸着に影響するの?
ドライマウスの原因を解説します

入れ歯の吸着に影響するの?ドライマウスの原因を解説します

最近入れ歯が外れやすい、以前と比べて吸着が悪いと感じている方、もしかしてお口の中は乾いていませんか?実は唾液と入れ歯の吸着には深い関わりがあるのです。
唾液には入れ歯と粘膜を密着させ、入れ歯を外れにくくする天然の糊のような役割があります。そのため、唾液が減少すると入れ歯が擦れて粘膜に痛みが生じたり、入れ歯が外れやすくなるなどの不快な症状を引き起こします。
また、唾液の分泌量が少なくなり、お口の中が乾く現象は「口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)」と言い、別名「ドライマウス」とも呼ばれています。

口腔乾燥症(ドライマウス)とは?

口腔乾燥症(ドライマウス)とは?

口腔乾燥症(ドライマウス)とは、唾液の分泌量が低下し、唾液の質が変化する歯科疾患の一つです。
入れ歯が外れやすいというお悩みの方は、口腔乾燥症(ドライマウス)が関係しているかもしれません。なお、口腔乾燥症(ドライマウス)は、一時的な喉の渇きや乾燥とは異なります。

ドライマウスのセルフチェック

下記のような症状が3ヵ月月以上続く場合は口腔乾燥症(ドライマウス)を疑い、歯科医院や専門外来への受診をおススメします。

  1. お口が渇いて喋りにくい
  2. 入れ歯が吸着しない
  3. 口臭が気になる
  4. パサパサした物が飲み込みにくい
  5. お口の中がネバつく
  6. 舌がヒリヒリする

唾液が減る原因について

唾液が減る原因について

唾液の分泌量の低下は、お口の渇きや不快感だけでなく、虫歯や歯周病を進行させる原因の一つです。さまざまな原因によって引き起こされます。
下記に、心理的要因・習慣的要因・医原的要因に分類し、お口の渇きの原因についてそれぞれ紹介していきます。

1.心理的要因

1.心理的要因
ストレス

唾液の分泌は、自律神経によってコントロールされています。過度なストレスや緊張状態は交感神経が優位に働くので、水分量が少ない粘着性のある唾液(ベタベタねばねばしている)が分泌されます。この状態が長く続くと、潤いが不足しお口の中が乾いた状態になります。反対に、リラックスしているときは副交感神経が優位に動きサラサラした唾液が分泌されます。
一時的なストレスであれば深刻になる必要はありませんが、ストレス状態が長く続く場合は何らかの対策が必要です。いかにストレスをコントロールできるのかが唾液の量と質を高めるポイントになります。

2.習慣的要因

2.習慣的要因
喫煙やアルコール、カフェインの過剰摂取

アルコールやカフェインは高い利尿作用があるため水分量が不足しがちに。その結果体内の水分バランスが崩れ渇きを感じる原因となります。また、喫煙によるニコチンの作用は交感神経に働きやすいため、ネバネバした唾液を出しやすくなり唾液の量も低下します。

噛む回数が少ない

よく噛むことで唾液腺が刺激され、唾液の分泌量が増えます。「早食いが習慣化している」「柔らかい物ばかりを好んで食べる」、このような方は噛む回数が少なく、唾液の分泌量が少ない傾向があります。
また、合わない入れ歯を継続的に使用したり、歯を失って何もしない状態でいる方も注意が必要です。しっかり噛めない状態が続くと、唾液の分泌が低下するだけでなく、噛む機能自体も低下します。そうなると硬い食べ物が食べられなくなり、柔らかい食べ物を選択して食べることで、より一層唾液の分泌量の低下が進んでしまうのです。

3.医原的要因

3.医原的要因
薬の副作用

薬の副作用の一つとして唾液の分泌量の低下があります。例えば、鼻水やくしゃみを抑える抗ヒスタミン作用は、症状の抑制と同時に唾液の分泌も抑制するのでお口の中が乾きがちになります。そのほか、消化器系のお薬で用いられることが多い抗コリン薬は、副交感神経の働きを高めるアセチルコリンの作用を抑制するため、唾液の分泌が減ってしまいお口が乾きやすくなってしまいます。そのほか、抗うつ剤や睡眠薬などの神経系のお薬や、痛み止めや、ステロイド薬、降圧剤などのお薬でも同様の症状が生じる場合があります。
「口の渇きは薬の副作用かしら?」と、自己判断で薬の服用を止めるのは危険です。薬の変更や減量などで改善できる場合があります。唾液の分泌の低下が気になる場合は担当の医師や歯科医師に相談しましょう。

4.全身的要因

4.全身的要因
シェーグレン症候群、糖尿病、放射線治療

唾液の減少は病気が原因であることも考えられます。中でもシェーグレン症候群は唾液腺や涙腺など外分泌腺が障害される自己免疫疾患の一つです。主な症状して目の乾燥やお口の乾燥が顕著に現れます。糖尿病や腎臓病などの全身疾患に原因がある場合や、放射線治療の後遺症を抱えている方も唾液が減少している場合があります。

加齢による減少

年齢を重ねていくことで唾液を分泌する唾液腺が老化し、唾液の分泌量が減ります。
また、年齢とともに口元の筋力も衰えていくことから、噛む回数も減り唾液を誘発しにくくなります。意識的に唾液腺のマッサージを行ったり、噛む回数を増やしたりすることで改善できる場合もあります。

監修ドクター
岡山大学 医歯薬学総合研究科
医歯薬学総合研究科・生体材料学分野

松本 卓也 教授