入れ歯生活

入れ歯のガタつきや痛みを解消!
義歯(入れ歯)安定剤を解説

入れ歯のガタつきや痛みを解消!義歯(入れ歯)安定剤を解説

入れ歯をお使いの方の主な悩みは、入れ歯が安定せずガタつく、食べ物が入り込む、噛んだ時に痛みを感じるなどの不快感や、「人前で入れ歯が外れてしまうかもしれない」といった不安が挙げられます。
このような悩みを一時的に解消してくれるのが「義歯(入れ歯)安定剤」です。
入れ歯が安定している人には必要ありません。
安定剤は、下記のような症状を一時的に改善することができます。

1.入れ歯のガタつきを改善する
2.食べ物を入り込みにくくする
3.噛んだ時の痛みを和らげる
4.入れ歯が脱落することへの心理的不安の解消

安定剤を使うタイミングと心得とは?

安定剤を使うタイミングと心得とは?

入れ歯安定剤は、入れ歯が合わないと感じた時の応急処置として上手に取り入れましょう。「入れ歯が痛い」「外れやすい」などの使用感に関するトラブルや、「入れ歯が外れてしまうかもしれない」といった不安を解消してくれるため、友人とのお食事や外出時、趣味のカラオケなど、大切な時間をおもいっきり楽しみたい時に適しています。
しかし、入れ歯安定剤は、入れ歯の維持や安定のために使う応急処置のようなもの。修理や調整とは異なるので、根本的な解決にはなりません。入れ歯のトラブルはなるべく早期に歯科医師や歯科衛生士にご相談下さい。

タイプ別入れ歯安定剤の特徴

タイプ別入れ歯安定剤の特徴

義歯(入れ歯)安定剤は主に4つのタイプが販売されています。
金属床など、入れ歯の種類によっては使用できない場合もあるので、使用の際は義歯(入れ歯)安定剤のパッケージをよく読み、入れ歯の素材に合うものを使用しましょう。
下記に、4つのタイプの特徴について説明します。

1.クリームタイプ

チューブタイプのペースト状で伸びがよく、指で薄く伸ばして使用します。メーカーにより粘着の持続効果が異なりますが、数時間から約1日間効果が続きます。
入れ歯と自分の歯ぐきの間に隙間はないけれど入れ歯が動きやすい、細かな食べ物が挟まりやすいといったお悩みの方におすすめです。

2.パウダータイプ

お水で入れ歯を軽く湿らせた後、歯ぐきに密着する部分に粉を広げて使用します。
お口の水分でパウダーが糊のように変化し入れ歯を安定させます。
薄付きで違和感が少ない軽い使用感が特徴です。入れ歯の大きなガタつきはないけれど、なんとなく安定が悪いと感じる方におすすめです。

3.クッションタイプ

弾力性のある安定剤です。ガタついた入れ歯の隙間をクッションで埋めて安定させ、入れ歯の痛みを緩和します。吸着性が高く入れ歯がズレにくくなるほか、入れ歯と歯ぐきの間に柔らかなクッションを入れたような感覚が2~3日継続します。
しかし、一部に安定剤が偏り均一に広がらなかった場合は入れ歯が浮いた状態となり、噛み合わせにズレが生じます。
また、長期の使用は入れ歯の材質(プラスチック)にダメージを与え、粘膜に炎症を生じさせる可能性があるほか、継続的に粘膜の一部に圧がかかった状態となるため、顎骨の吸収を招く可能性もあるので注意が必要です。
なお、金属床の入れ歯には使用できません。

4.シートタイプ

シート状の安定剤を自分で好きな形にカットして使用する安定剤です。
予め上顎用[じょうがくよう]・下顎用[かがくよう]にカットされたシートも販売されているので携帯するのに便利です。
シートを伸ばし、自分の入れ歯の形に合わせて使用するため、ほかの安定剤のように入れ歯と歯ぐきから余分にはみ出すことがありません。

安定剤のご使用の注意点

安定剤のご使用の注意点

ドラックストアで気軽に手に入る義歯(入れ歯)安定剤は、入れ歯のガタつきや不快感を一時的に解消できる便利なアイテムですが、使用にはいくつかの注意が必要です。
安定剤は一時的な応急処置だと捉え、常用的な使用は控え、入れ歯が安定しにくいと感じたら早めに歯科医院へ相談しましょう。

安定剤の注意点

入れ歯安定剤を使用するに際し、いくつかの注意点を説明します。

1.使用前には入れ歯のお手入れをしましょう

1.使用前には入れ歯のお手入れをしましょう

安定剤を使う前に入れ歯をしっかり磨きましょう。
食べカスが付いた状態ではせっかくの安定剤の効力が落ちてしまうほか、入れ歯に付着した細菌が停滞し炎症を起こす可能性もあります。

2.長期の使用はNG

2.長期の使用はNG

あくまでも入れ歯安定剤は一時的なトラブルの改善です。
長期間安定剤を使い続けていると、噛み合わせの位置の変化に気づきにくくなり、本来の正しい噛み合わせの位置が狂ってしまいます。そうなると「どこで噛んで良いかわからない」といった問題を招き、新しい入れ歯を制作する際も、噛み合わせのトレーニングが必要になります。
また、安定剤を長期に渡り使用し続けると、継続的に粘膜に圧がかかった状態となり、顎の骨がますます痩せてくることもあるのです。
そうなると更に入れ歯が安定しにくいといった悪循環を招くことになりかねないため、安定剤の常用的な使用は控え、なるべく早い段階でかかりつけ医に相談しましょう。

3.入れ歯の種類に合った安定剤を選ぶ

3.入れ歯の種類に合った安定剤を選ぶ

多くの入れ歯の床(歯ぐきの部分)はレジンとよばれるプラスチックでできていますが、中には特殊な加工がされている入れ歯もあります。
例えば、入れ歯の内面を柔らかなシリコーンで加工している「シリコーンデンチャー」は、安定剤をはがす時にシリコーンも剥がれ落ちてしまう可能性があるため安定剤の使用はできません。
また、クッションタイプの安定剤は金属床には使用できません。
入れ歯安定剤を選ぶ際は各メーカーの注意事項を読んで、自分の入れ歯が適応するか確認の上使用しましょう。

4.使用した後のお掃除は念入りに

4.使用した後のお掃除は念入りに

入れ歯に安定剤が残ったまま乾燥してしまうと除去が困難になります。
残った安定剤の上に更に安定剤を重ねて使用することになると、ますます除去が困難になるほか、噛み合わせの変化や粘膜の炎症を生じかねません。
入れ歯のお手入れと共に、お口の中にも安定剤が残っていないかもチェックしましょう。

監修ドクター
岡山大学 医歯薬学総合研究科
医歯薬学総合研究科・生体材料学分野

松本 卓也 教授